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▶ 本学 共通実技研究室 古性淑子准教授の研究課題「静物鉛筆デッサン」の自動評価モデルの定義と学習支援・管理システムの構築」が科学研究費助成事業に採択されました。
ニュース記事をさらっと読んでわかるのは「静物鉛筆デッサン」という単語くらいで、科学研究費助成事業ってなんだろう、自動評価モデルって??という状態で、他は「なんかすごそうだな」くらいしかわかりません。
古性先生といえば、Webデザインやコンピュータ関係の科目を担当されていて、さらに学内のパソコンの管理をされているため、ITセンターのボス的存在です。
雑談の続きで伺った「研究課題」の話しは、美術の世界と近いようで遠い、興味津々なものでした。
「ここだけの話」にしておくには惜しい内容が盛りだくさんだったので、この場を借りて色々伺いたいと思います。
まず、科研費のことからお聞きしたいと思います。
「科研費」で検索をかけると日本学術振興会という青を基調にしたページが登場しました。「有益な研究に対して費用を補助しましょう」という事業で、色々な項目での審査があるようですね。
採択(研究に補助金をだしてくれる)されるには第1段階の審査で、研究課題の学術的妥当性や、研究計画や方法の妥当性、独創性など5つの項目で点数がつけられます。
狭き門(例えが適切ではありませんが)という印象を受けますが、どうでしょうか。
応募する部門にもよりますが、採択率は大体30%から35%の間くらいじゃないでしょうか?日本中からその分野の専門家が応募するので競争はきびしいのかもしれません。
以前にも採択されたご経験があると伺いましたが評価を受けるのは難しいことなんですね。
毎年応募し続けて、15年ぶりに採択されました。
15年ぶりですか。今回はどういった点が評価されたと思われますか?
今回の研究テーマは前例がほとんどないので、独創性が高く評価されたのではないかと思っています。
今回の研究課題で採択される自信はありましたか?
自信はありませんでしたが、まったく別部門のとある方が、「これはいけそうな気がします」と予言していた通りになりましたね(笑)
研究課題の内容についてお聞きします。
タイトルについている「自動評価モデル」という単語が難しいのですが、例えば、音声の「自動評価」というと、まっ先に、カラオケの採点システムみたいなものを連想します。
「静物鉛筆デッサン」でそれをやってしまおう、というようなことでしょうか。
そうですね。
カラオケでは「音程」とか「リズム」など点数化されますが、静物鉛筆デッサンでも評価項目をつくって点数化して、適切なアドバイスが返せるようなモデルを作りたいと考えています。
「モデル」という単語は、色々な使われ方をしますが、今回の研究テーマにある「モデル」とは何でしょうか。
デッサン画像から得られる情報をまとめて作られた、ちょっと複雑な数学の式でしょうか。
例えば、直方体とか円錐とかの基本的な形とどれくらい似ているかとか、影の向きは正しい方向を向いているかなどを取り込んだデッサン画像から取り出して評価する数式を作ります。
評価項目の洗い出しから研究が始まるのですが、今、初心者向けデッサンの描き方の本を読んでいて、美術が苦手な私には、すでに拒絶反応がではじめていたりします。
苦手なものを研究課題にしてしまうんですね。
苦手でできない物だからこそ、客観的に評価できれば、デッサンの勉強をしている人で近くに指導してくれる人が居ない場合にも役に立つかなと思ったからです。
今は、「セッティング」とか「質感」とか「立体感」とか「パース」とか「モチーフの軸」とか調べてはまとめて、何を評価するか検証をしています。
データが蓄積していけば、受験などの公平な審査にも一役買うことになるかもしれないんですね。
では、今回の研究課題に到るまでの経緯を教えてください。
私は、大学院の学生時代、JPEG画像の画質評価を研究していました。
人が見て「劣化している」と感じる画像をコンピュータで評価させても「劣化している」と答えてくれる評価モデルです。
大学の先生になってすぐに、大学院のときの先生から、同じ手法でお習字の評価ができないか検討してみてはどうかと言われ、毛筆漢字文字の美的評価についての評価モデルを作って良い結果を得る事ができました。
JPEG画像が評価できて、毛筆漢字文字の美しさが評価できるなら同じ手法で、他の物を評価したらどうなるかなと通勤電車の中で思いついたのがきっかけです。
大学院時代の研究が今につながっているんですね。
先生のお話からは、「大学」という場所との深いつながりを感じます。
私の恩師達が今の私の基礎を作ってくれたように、誰かの基礎を作る手伝いをする教育者になりたくて、大学の先生になりました。
教育者としても研究者としてもまだまだですが、関わってきた教え子が年賀状やメールなどを送ってきて元気な様子を知らせてくれるので、誰かにとって思い出してもらえる人になれたことが一番変わったところでしょうか。
このブログの読者(ハマビ関係者がダントツで多いのですが・・・)に伝えたいことがあればお願いします。
先生や友人、先輩、後輩など多くの人に助けられて今の私があります。
その多くは学生時代に培った人脈です。
学生時代にたくさんの人脈を作ってください。
それが、今後の人生の宝になります。
その多くの人の中の一人に私が含まれていれば幸せですね。
古性先生、ありがとうございました。
実際に話を聞いたり、質問できる人が身近にいる環境というのはワクワクします。
大学の公式ページはそっけないかもしれませんが、情報を得る手段の一つではあります。
本学の学生であればオフィスアワーを利用すれば、直接話しを聞いたり、質問したりすることができますね。
オフィスアワーについては学務や研究室に掲示がありますので、積極的に活用してみましょう。