さて、5日間の京都合宿を終え、次は大学へと場所を移し、最後の山田哲平さんのワークショップに移ります。
山田さんは、人々の記憶や経験についてのインタビューを重ねながら、個々のナラティブをその人の心臓の鼓動音とともにインスタレーションする、ユニークな作品を制作しています。この2日間は、参加学生がこれまでの自分と向き合いながら新たな物語を創造してゆくための対話を行いました。自分の生い立ち、エピソード、思い出などをワークシートに記入し、それをお互いが発表しあいながら、自分とはどのような存在なのか、他者にどう共感できるかなどを話し合う、濃密な2日間。時に沈黙し、時に涙を浮かべながら自分を語り、対話するこのワークショップは、学生たちにとってある意味もっともヘビーなものでしたが、他者と共感できる貴重な機会となりました。
約一週間、3つの手法で行ったワークショップから、学生たちはそれぞれ大事なものを感じ取り、学んだと思います。合宿を終えた後の学生たちは、何かを乗り越えたような安堵感と、仲間と分かり合えた喜びにあふれていたのが印象的でした。なにより私自身、美術という存在が、相互理解のための可能性のツールであることに気づけた点で、大いに学ぶことのできた一週間だったと思います。
これから約3ヶ月間は、再び自己の制作に立ち返ります。10月、そして来年1月の展覧会に向けて素晴らしい作品を生み出してくれると信じています。
(森山貴之/共通科目)