【共通実技・コンテクストアーツ科目】コンテンポラリーアート演習

横浜美術大学では、2年次後期選択必修の専門科目として、専攻するコースの枠を越えて様々な専門知識・技術に触れる「コンテクストアーツ(周辺実技)科目群」が設定されています。

今回ご紹介するのは、安部定先生による「コンテンポラリーアート演習」。この授業は「コンテンポラリーって何?」という問いかけから始まり、学生それぞれが感じ取った「コンテンポラリー(contemporary : 同時代の、現代の)」を作品として結実させ、展示を行います。

今年度は2名の学生が履修し、京浜急行線黄金町駅高架下の横浜美術大学サテライトスタジオ”HAMABI AIR”にて展示を行いました。1/26〜31, 2/2〜7の前・後期交代、ふたりとも初めての個展です。それぞれ、どのように「コンテンポラリー」を捉えたのでしょう。

黄金町サテライトスタジオ「HAMABI AIR」

 

 

授業最初に行う「コンテンポラリー」の調査では、直近一ヶ月分の新聞に目を通し、自分のアンテナにひっかかる「気になる」を抽出していきました。集中して紙面を目で追っていくうち、ひっかかりのある写真やことばが知らず知らず目に飛び込んでくるようになったら、感覚が研ぎ澄まされて来た証拠。集めたキーワードをもとに先生・助手・学生同士でディスカッションを行い、自分が何に関心を持っているのか、この時代をどのように捉えているのか、徐々に焦点を絞っていきます。

それぞれの「コンテンポラリー」の方向性が見えてきたら、海外の芸術誌を見たり素材を見たり、表現の方法をインプットしながらアイデア同士をリンクさせていきます。試行錯誤を繰り返しながら芸術企画を磨き上げ、外部展示を実現するプロセスを学びました。

 

☆ビジュアルコミュニケーションデザインコース2年 立川弥侑さん「かさね時」

「かさね時」「かさね時」 IMG_0061 IMG_0063

 

「かさね時」

重ねたメッシュのスクリーンに投影される風景の映像、雨粒のように天井から下がるレジンのドングリ、透明フィルムに印刷されたデジタルコラージュ作品。「かさねる」ことに意識を向けた作品群が凛とした空気で会場を包んでいました。立川さんは「歴史は時間を”かさねる”ことである」という観点から表現を探り、時間の重なりを象徴するスクリーンの間に吊るした葉や来場者自身が介入することにより、連続的な「時間」のなかに「歴史」というページが層のようにかさなるイメージの視覚化を試みました。

 

☆映像メディアデザインコース4年 青山真鈴さん「LIFE」

「LIFE」 「LIFE」 「LIFE」「LIFE」「LIFE」

青山さんは「捨てられる子ども」「高校生の妊娠」など、「子ども」に関する新聞記事やニュースに強く関心を抱き、新生児大のキューピー人形や映像を用いた作品として「コンテンポラリー」を表現しました。子どもは臍帯で母体と繋がっているはずなのに、人形に絡み付いたチューブの先にあるのはビールの空き缶やタバコの吸い殻。もの言いたげな大きなキューピー人形の上から小さなキューピー人形が水面に揺れる映像が写し出され、その水の音の裏側では微かに確かに拍動する心音が響き、ぞくりとするような空間が出来上がっていました。

たった半年の間に企画、構想、制作、展示をすべて行うのは決して楽ではありません。それでも最終的にはすべてを成し遂げたという結果は、間違いなく学生の力になるはずです。

選択必修の専門科目としてのコンテクストアーツ科目群は、一年以上大学で美術の基礎を学んだ学生を対象としているため実践的な内容をもつ授業ばかりです。春に2年生となる1年生、あるいは入学を待つ、受験を考えている方々、専門実技の”周辺実技”選択はお決まりですか?